【編集あるある小話】「えー、それやっちゃだめなの!?」


リアルロボットアニメの金字塔『機動戦士ガンダム』。

「1979年のアニメ放映当時、小学生5年生だったおち少年は、このアニメのリアルな世界観に首ったけとなり、約30年の刻を経て、同アニメの関連本を多数世に送り出すことに成功、ヒットさせていく……」(永井一郎ナレーション風で)

600冊以上手掛けてきた中で、最初に取り上げるのがなぜガンダム本なのか?

単純に好きだからです(笑)。


ということで、「不定期連載 おちひでき編集ヒストリー第1弾」は「ガンダム本」です。

ガンダム本は、出版社時代に実に10冊以上手掛け、10万部超えも4本出たのですが、一番思い出深いのは、最初に作った『永遠のガンダム語録』です。

当時、会社として「版権もの書籍」の実績は、ほぼゼロでした。

ですので、全く前例がありません。

どこに電話したらいいのやら、ロイヤルティはいくらかかるのかやら、契約条件に在庫管理のことが細かくかかれているが「うちの会社で対応できるのか?」やら、課題一つ一つと向き合う日々が続きました。

中でも一番大きかった課題が、カバーデザインでした。

デザイナーさんと相談し、アムロとシャアというアニメの登場キャラクターの画像を組み合わせると面白いとなりました。そして、これはいい出来だ!というデザインを権利元さんに提示したところ、強烈なダメ出しを食らったのです。

「アニメ画像を、勝手に加工したらダメです!!!」

(ええ~なんで~!? 組み合わせただけじゃん! そんなにいじってないじゃん!)と密かに思い交渉を続けるものの、「絶対ダメ!!!」の一点張りで埒があきません。

しかし、自分としてはこのデザインがとても気に入っている。

諦めきれない……。

そこで、粘り強くしつこくしつこく(笑)交渉を重ね、「モザイクでぼかすのなら、認めましょう」というところまで引き出し、なんとか発刊にこぎつけたのです。

運のよいことに、モザイクがドットのようになり、むしろ洗練された感じがして結果オーライの素晴らしいカバーとなりました。

そうして迎えた2007年1月5日の発売。

「なんとしても増刷をかけたい」という野望を胸に燃やしていた私は、毎日POSデータを確認しては、営業部門に行き店頭での売れ行きを聞きました。

が、営業はあっさりしたもので、「おちさん、初版3万部も刷っています。そんなに毎日来られても、状況は大きく変わりませんよ」とうるさがられる始末(笑)。

そうした滑稽なやりとりがありつつ、『永遠のガンダム語録』約1ヶ月も経たないうちに重版が決まり、その後も着実に版を重ね、結果15万部を超えるヒットとなりました。

さらに、このガンダム本のヒットは、予想外の効果をもたらしました。

ディズニーなど他の版権ものを会社として手掛ける足掛かりになっていったのです。そういう点からも、私にとっては思い入れの深い一冊となりました。

色々な経験をさせてもらったガンダム本ですが、手掛けさせてくれてバックアップしてくれたPHP研究所さん、いつも無理を言う私に丁寧に対応くださった権利元のサンライズさん、めんどくさい私の注文にこたえ続けてくれた編集プロダクションのレッカ社さん、なにより買ってくれた読者の皆さんの応援をいただき、ヒットが続きました。

今振り返っても感謝の気持ちで一杯です。

ありがとうございます!!!

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